Brother
「オイ、ハナたれ天国」
「なんだバカ黄泉」
売り言葉に買い言葉。
猿野が挑むようにして言い返す。
一瞬の間の後。
猿野は黄泉に額を突き合わせ、満面の笑みで吹き出した。
笑って笑って。
笑い疲れた頃、猿野がふと真面目な顔で、間近の男の名を紡いだ。
「黄泉」
「ン?」
「黄泉」
「ナンダヨ」
「黄泉」
「……。」
「大好き」
真直ぐ瞳を見つめて言い返せば、黄泉から軽くキスをされた。
くすぐったくなり猿野が顔を背けると、強く優しく抱きしめられ、ソファにそっと押し倒される。
「あ〜これだからアメリカンは…」
盛っちゃってと、続く言葉は強引に侵入してきた舌に絡み取られた。
吸い付いてくる舌は味わうようにして口中を彷徨い、歯裏を撫でてから息継ぎに外に出ていった。
2人の間にゆらり架かる唾液が、名残惜しげに銀糸となりぷつりと切れる。
それが合図かのように、黄泉の右手が猿野の着崩したシャツにするりと入り、白い肌を暴いていった。
三日月の頼りない光に照されたソレは、まさに妖艶という色気を放ち、黄泉はごくりと唾を飲み込んだ。
「オイ天国、止メタイナラ今ノウチニ言エヨ。」
「ばか言え、もうガキじゃねーんだ」
―だから、ちゃんと抱いてヨネ。
悪戯っぽく挑戦的に、どこか甘えるような声音で囁いてから、今度は猿野から誘うようなキスを仕掛けた。
唇を舐めるだけで、けして咥内には入ってこない、焦らすだけのキス。
猿野がからかうように、チロチロと舌先で黄泉を惑わせていると
「…オマエガ誘ッタンダカラナ」
覚悟シロヨ?と、胸の飾りを弄られた。
黄泉は、ぴくんと跳ねる猿野を再び強く抱き締めてから、後ろを向かさせ腰のラインを舌で辿った。
鍛えられていると一目で分るそのくびれを唾液で湿らせ、キスをしてまわる。
黄泉自身、馬鹿みたいな独占欲だと思いながらも、その白い肌に鬱血するほど強く吸いつくと
「人の身体で遊ぶな」
と猿野から照れを滲ました声で苦情が出た。
「ソイツハ悪カッタナ。」
クククと喉で笑うと、黄泉は猿野の両足を抱え上げ、その秘孔に舌を捩じ込んだ。
「はっ…んっ!」
途端弾かれたように猿野の口から嬌声が洩れる。
普段の猿野からは考えられないような声。
艶に濡れぼそった声に、黄泉は、予想通りと口元を歪ませ。
勢いのまま、わざと猿野のある一点を強く舐め上げた。
「んっ…あッ」
途端、さっきよりもより、激しくあえぐ猿野。
腰をくねらせ全身で反応する猿野を、黄泉はしばらく楽しむ。
ふと、猿野の股間を触ると、その欲望の証は、すでにはちきれんばかりに膨らんで僅かに痙攣し、限界を訴えていた。
「イキタイカ?」
舌を孔から離し、余裕を込めて、猿野に問う。
帰ってきたのは、無言。
「ナラ、コノママデイイナ」
わざと、そっけなく言い放つ。
すると、猿野はいやいやをするようにかぶりを振った。
「ドッチナンダ?」
「……い。」
「ン?」
「……たい、――イきたい!!」
涙目で快楽を訴える猿野。
その様子はあまりに可愛すぎて、かえって黄泉の加虐心を煽った。
黄泉はペロと自分の唇を舐め、告げる。
「『イきたい』ジャナイダロ。
ナンテオ願イスルカ、教エタハズダ」
ヤッテミロ。言外に命令すると、猿野は目を見開き、また、いやいやと頭を振った。
「デキナイノカ。ナラ、コノママダナ」
わざとらしくため息を付き、ベットから降りようとすると、猿野にギュっと服を握られた。
「出来る、から。ちゃんと出来るから!!」
羞恥と快楽で揺れる猿野が、必死で黄泉を引き止める。
そして、僅か逡巡した後、猿野は自分で自分の尻を左右に大きく割り開き、小さな声で、言った。
「天国のここに、黄泉の…黄泉のおっきいの挿れてください…っ!!!」
言ったあと、激しい羞恥心から、ひくひくと泣き出す猿野。
その様子があまりに可愛くて、黄泉は虐めるのをやめ、ヨクデキタと猿野の頭を撫でてあげた。
そして黄泉は、荒い息を吐き出し続ける銀時の口に自分の指を入れて軽く湿らせ、今まで舐めたせいか柔らかくなった孔にゆっくりと沈み込ませた。
「最初ハ2本ナ。」
誰に聞かせるでもなく呟いて、中を引っ掻いたり掻き混ぜると最初は拒否していた身体も素直になり、やがて指では望む快楽を感じなくなってきた。
イイカ?と猿野に目で尋ねると、猿野の中が、きゅっと締まりがよくなった。
黄泉はそれを了解の合図だと勝手に解釈し、すっかり待ち望んでいる自分のモノを桜色に染まった猿野の中に埋めていく。
途端、さっきより激しくなった嬌声が2人しかいない部屋に響き渡る。
それがまた猿野の羞恥を煽ったのか、布団に潰された猿野自身がぶるりと震えたので、空いていた手でその先端を押さえ付けた。
「ちょっ、黄泉…「出スノハ同時ダ。」
残酷にも聞こえる甘い台詞を吐き出してから、黄泉は一気に自分のモノを猿野の最奥に埋め込んだ。
「ふぁ…はッ……んッ」
待ち望んでいた独特の淫靡な感触が猿野を支配し、思わず猿野は快楽に声を上げ、同時にまた、締め付けた。
その甘い仕返しに、黄泉はニヤと笑い、囁く。
「天国ノ中…熱クテ、ヌルヌルシテルゾ。ソンナニ、オレノガイイノカ?」
かぶりを振りながら自分に爪を立てる猿野を愛しく思い、黄泉は名前を呼びながら、小さな孔をさらに激しく攻め立てる。
「ア、やぁ…っ!」
無理やり犯される処女のように、儚げに泣く猿野を、黄泉は容赦なく攻め立てる。
「ひぅ…ん…ッ!!」
黄泉の指先が、猿野の胸飾りをクリクリと弄る。
初めは柔らかかったそれは、快楽を受け、キュンとしこり、硬くなった。
猿野の欲望もまた、更に大きく震える。
そのとき、猿野は無意識なのか、小さく
「兄貴、もうダメ…ッ!!」
すすり泣くように呟いた。
その一言を聞いた途端、黄泉ははじめて行為をする童貞のように、一気に股間が膨らむのを感じた。
「……ッ…反則ダロ…!!」
何処か嬉しげに黄泉は呟き、天国の中に勢いよく液を吐きだした。
同時に猿野を戒めていた手も解くと、猿野の欲望もまた、勢いよく弾け飛び、真っ白なシーツを汚した。
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結局、その後しばらく、猿野が喘ぎ疲れるほど2人は肌を重ねあって。
ようやく夜が明けるころ、黄泉は無理やり天国を腕枕し、やっと、行為を終えた。
けだるい沈黙につつまれたベットの上、黄泉はぐったりとしている猿野にふと思いついたように呟いく。
「ソウイエバ、サッキオマエ、チャント言エタジャナイカ」
「何を?」
「……兄貴、ッテ。」
猿野の耳元で息を吹きかけるように囁くと、猿野は真っ赤になって黄泉に背を向けた。
「知らねーよ、さっさと寝ろ!!」
喘ぎすぎて枯れてしまった声でわざと怒ったように言葉を投げつける猿野を、黄泉は可愛イ奴ダと目を細め、
「オヤスミ、天国。」
らしくなく優しく伝えると、満足したように目を閉じた。
しばらくすると、黄泉の口から、規則正しい寝息が聞こえはじめる。
猿野は無防備になった黄泉の背中に、そっと
「兄貴のばーか。」
小声で言ってみる。
途端、なにやら湧き上がる羞恥。
照れくさいような、嬉しいような感覚が強すぎて、猿野は布団を頭まで被った。
今は恥ずかしすぎて、この呼び方でヤツを呼ぶなんてできないけれど、でも、いつか。きっと。必ず。
猿野は窓から覗く生まれたての朝日に小さく誓って、自分も黄泉と同じように目を閉じた。
「おやすみ、兄貴。」
end